公開日:2026/2/2

更新日:2026/2/2

「読まれない」社内報制作から脱却。WEB・紙の使い分けと外注のメリットとは

「社内報って、毎号同じようなネタばかりで読む気がしない」
「社内報の取材なんて、通常業務が忙しくて対応する余裕がない」
こうした事業部門からの厳しい声は、広報担当者にとって耳の痛いものです。

また、少人数で業務を回している総務・広報部門にとって、社内報の制作にかけられる時間は限られています。「いっそのこと、もう廃止してはどうか」という声が上がるのも、もはや時間の問題と感じている担当者も少なくないでしょう。では、本当に社内報は不要なのでしょうか。本稿では、その疑問について少し掘り下げてみたいと思います。

「読んでくれない」「離脱率が高い」
WEB社内報にありがちなテンプレ記事

社内報は、本来社内への情報共有を目的としていますが、それ以上に「コミュニケーションツール」としての役割も期待されています。情報伝達という側面だけを考えれば、イントラネットや社内ポータルサイトへの情報掲出だけで十分に役割を果たせるでしょう。実際、そのような方法を採用する企業も増えています。

ウィズワークス発行の『社内報白書2023』によると、約6割の企業が、Web社内報を採用しており、紙媒体に迫る勢いとなっています。もはや定番の発信手段となりつつあるといえるでしょう。

Web記事や専用アプリによる情報発信には、「速報性が高い」「気軽にアップできる」といった大きなメリットがあります。しかし一方で、受け手が必要な情報だけを拾い読みする傾向が強く、「離脱率の高さ」という課題を抱えています。さらに、デザインフォーマットが固定されている場合、内容に応じたレイアウト変更が難しくなります。

例えば、人事関連の「人事制度改定のお知らせ」と「新事業部門立ち上げのお知らせ」といった記事を想像してください。前者は難解な文章と堅い図表が並ぶ「通達書」のようになりがちで、後者は定番の集合写真とテキストによる事業内容の紹介に終始しがちです。これらは制作側にとっては制作の負担も軽く効率的ですが、似たような記事が並ぶことで読者は既視感を覚え、スルーしてしまいます。「形式的」に掲載されていても、見た目が単調であれば読者の興味を惹けず、離脱率はさらに高まってしまうのです。

通達書をウェブに掲載しても伝わらない
部署紹介でよくある退屈な集合写真
課題読者の心理的離脱担当者の陥りがちな罠
定型化された内容「またいつもの社長訓示か」と既視感でスルー効率を優先し、前号の踏襲が目的化する
情報の羅列固定デザインで文字が詰まりすぎていて、読む気が失せる伝えたいことを整理せず、すべて載せようとする
熱量の欠如誰だかわからない集合写真ばかりで親近感がわかない素材不足で、とりあえず撮った写真(ありもの)を使用

紙の社内報がデジタルよりも社員に読まれる理由

コンテンツの特徴をより明確に打ち出せるのが、紙媒体に代表されるクリエイティブ・メディアです。これらは企画やデザインの介入範囲が広く、トーン&マナー(トンマナ)を守りながらも、フォント・写真・レイアウトに自由度を持たせた表現が可能で、読者の視線誘導も意図的に設計できます。

例えば、同じ内容でも形式的な文書とデザインを施した文書とでは、伝わり方がまったく違います。特に、商業出版を代表とする紙媒体では、読みやすさを極限まで高めるために、エディトリアルデザインや文字組版などの独自の制作工程が加わります。読者ターゲットに合わせて、フォントの種類やサイズ、文字・行間の調整、見出しの配置、ページ番号や柱の位置まで細かく設定するのです。これは、読者への「もてなし」の一環で、普段何気なく読んでいる紙の書籍が、デジタルよりも読みやすいと感じる理由のひとつです。

群馬大学の柴田博仁教授らの調査によれば、紙はディスプレイに比べ「没頭しやすく、理解しやすく、記憶に残りやすい」のだそうです。ディスプレイの読みにくさとして、

1.画面の発光による「目の負担」
2.ページ全体を最適なサイズで表示しにくい「操作・身体の制約」
3.アイコンやツールバーなど「集中を妨げる要素」

の3点が挙げられています。

実証実験でも、紙はPCより文書操作が25%早く、エラー検出率も高いという結果が出ており、柴田教授らは「電子環境は、読書に没頭したり、深い読みを行うには好ましい環境とはいえない」と結論づけています。また、紙は「抽象的思考」を促し、電子は「具体的側面」への注意を喚起するという、役割に応じたメディア選択の重要性も説いています。

この脳の思考モードの切り替えについては、メディア分析家と名高いマーシャル・マクルーハンの理論が源流にあると筆者は考えます。彼は1960年代、インターネットやデジタルデバイス登場より遥か前の時代に「ホットなメディア/クールなメディア」という分類概念を提唱しました。

たとえば、「映画」がホットなメディアであるのに対し、同じように映像や音声を用いる「テレビ」がクールに分類されています。当時のテレビはブラウン管の低解像度だったため、情報の補完を受け手に委ねていたのです。そして、研究が進んだ80年代に、もうひとつの理由が明らかになります。それが、「反射光と透過光」による受け手の受容モードの変化です。

PCやスマホ等の「透過光デバイス」は右脳優位の「全体の流れを追う」モードになりやすく、紙のような「反射光」は左脳優位の「分析モード」に入りやすいといわれています。目的に応じてメディアと脳のモードを掛け合わせることが、情報伝達の質を左右するのです。

紙は「セレンディピティ」を生むプッシュ型メディア

紙媒体のもう一つの強みは、一冊の「全体構成」を通じて読者を導く力です。限られたページの中で起承転結を意識した構成(台割)を組むことで、「気づいたら最後まで読んでいた」という体験を生み出せます。

巻頭のキャッチーな企画や箸休めのコンテンツを戦略的に配置することで、読者は当初の関心に関わらず、会社が伝えたい内容に自然と触れることになります。

ユーザーがWebやアプリなど、自ら必要な情報にアクセスする「プル型メディア」と異なり、クリエイティブ・メディアは「プッシュ型」としての優位性を持ち、「セレンディピティ・メディア」ともいえる存在です。

忙しさに追われると、広報業務は「つくること」自体が目的化しがちです。しかし、広報の本質は「何をどう伝えるか」にあります。Webと紙、速報性と没入性、プル型とプッシュ型──それぞれの特性を理解し、意図的に使い分けるメディア設計こそが、これからの広報活動をより戦略的に進化させるカギになります。

まとめ:社内報を「コスト」から「投資」へ

社内報を単なる「恒例行事」として作るのは、非常にもったいないことです。「形だけの社内報」から脱却し、社員の心に届くメディアに変えてみませんか。

社内に制作リソースが不足している場合は、外部の力を借りることも有効な手段です。外部の目線で会社をあらためて俯瞰することで、自社の強みを再発見することもあります。デザイナーやカメラマン、ライターなどプロの制作チームを介することで、成果物としてのクオリティがアップするだけでなく、インナー・コミュニケーションツールとしての効果が劇的に向上するはずです。

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赤羽正史

ダイヤモンド・グラフィック社 メディア・プロデューサー/マーケター

スポーツ用品マーケターを経て98年にダイヤモンド社入社。書籍・雑誌のマーケティング、人材開発事業などを担当。13年よりダイヤモンド・グラフィック社に移籍。主な担当領域は企業・大学の広報・人事コンサルティング。慶應義塾大学経済学部卒業。

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